塵芥録

思っていることをうまくことばにしていきたい

映画『オーケストラ!』

アマゾンのプライムビデオは中々すごい。小遣い程度の年会費でかなりの本数の映画が見放題なので、ツタヤとかに借りに行くのも億劫な出不精な自分にとってはとてもありがたいサービスである。

今日の日記は、そんなプライムビデオの中の一本『オーケストラ』の感想。

ボリショイ劇場の清掃員として働く元指揮者・フィリポフが、かつてのメンバーと共に正規のオーケストラのふりをしてパリに乗り込む、という筋。

話の核心にかなり関わってくるのがロシアの共産党時代の話、それもブレジネフによるユダヤ人迫害というセンシティブなものだが、これは終盤でようやく明かされる。ただし思い返すと伏線は何ヵ所かに張られていた(オケメンのサシャやユダヤ人親子など)。指揮者の一発逆転劇と過去のポリティカルな文脈が上手く合流した脚本だなあと感じた。

ただし、ユダヤ人迫害がキーになる割には当のユダヤ人の描き方が諧謔的だった。金稼ぎに熱心なユダヤ人親子がその際たるものだけど、あれはコメディとして許容範囲なのだろうか…全編がコメディだから違和感ないのかな、たぶん。

クライマックスは最後のチャイコンの演奏。ソリストの演奏に失ったかつての仲間の俤をみたメンバーたちが、究極のハーモニーを奏でる。ソリストの出生の秘密も、彼女がソリストに選ばれた理由も、すべてをコンチェルトの演奏が明らかにしていく。映画中の全てのストーリーがこの演奏に収斂していくようで、圧巻のラストシーンだった。やっぱり邦題は原題通り『コンチェルト』にすべきじゃないかなあ。

最後に、メラニーロランがすごくかわいかった。