塵芥録

思っていることをうまくことばにしていきたい

映画『南極料理人』

これもプライムビデオの中の一本。

第三十八次南極越冬隊で調理係となった西村を中心に、南極での一年を描く。

タイトルからも分かるように作品のテーマは食事。けれど食事を主軸に据えながらも隊員ひとりひとりのストーリーが作品中に散りばめられていて、群像劇とまではいかないまでも個の立った素敵な映画だった。

流石に全員のバックグラウンドを描き切るには尺が足りなかったのか、人物描写が足りないと感じる箇所もあって、そこは残念。

だがそれを差し引いても隊員たちの動きや感情の起伏は等身大で納得がいくものばかりで、十分に一つのキャラクターを劇中に見出すことが出来る。自分としては俳優の演技力(自然体を演じるという点も含め)を垣間見た作品だった。

ハイライトは何といっても食事シーン。全員が何もしゃべらず無心に掻き込むシーンが意識的に多用されているように思ったが、咀嚼の音やむせる音が生生しく響く。これが非常な効果をもって、食べるという行為を見せつけてくれていると感じた。生きるというのは食べるということなんだなあ。零下70度、日々の重労働、逃避不可能の極限状態で活動するからこそ、生きるための食べるという行為が際立つ。

最初の朝食シーンと最後の朝食シーンの差はかなり印象的。お互いに気をつかわなくなっているというか、一年間一緒に生活してきたことが見て取れるようになっていると思う。

うーん、やはり考えていることを文章にするのは難しい。